【 磁気テープヘッド プリアンプ(NAB or CCIR イコライザーアンプ) 】

(実用目的)
・オープンリール磁気テープの再生ヘッドからの信号を適切なインピーダンスで受け取り、
NABカーブもしくはCCIRカーブのイコライザーによる補正と、ラインレベルまでの増幅を行いプリアンプやADCなどへ送り出す。
・音量調整が可能なセッティングにすればダイレクトにパワーアンプにつなぐこともできる。
(ALP−mkIIで目指すメリット)
・テープレコーダーの内部回路は多くの機能を実現するために非常に複雑なものになっています。
ALP−mkIIを使うことで、再生専用ヘッドプリアンプとして高音質化に有利な純度の高い信号処理が行えます。
・入力インピーダンスの精密な調整でヘッドの能力を引き出す。
・NF型、CR型とタイプの異なるイコライジング回路を駆使して音質を追及する。
・可能であればヘッドからのバランス伝送による高音質化も試す価値あり。
・ディスクリート初段回路による高感度でローノイズな音質
・充実した電源システムとレギュレーターのチューニングによる高S/Nで味わい深い音質
【 いくつか押さえておきたいこと 】
アリス 「ALP−mkIIはイコライザーアンプ(周波数特性補正増幅器)として大いに活躍できるようにと考えて設計しました。
全盛期のオープンリールテープはアナログレコードのカッティングマスターやCDの原盤として使われていました。
そんなオープンリールテープを再生するためのテープヘッドプリアンプもまた、
ALP−mkIIにとって、これ以上ないほどのうってつけのお役目です。
そこで、貴重なテープ財産を味わうためにも、いくつか押させておきたい知識があります。」
- NABカーブ、CCIRカーブ
磁気テープの再生信号はハイ上がりの周波数特性を持っています。
これは周波数に比例してヘッドの出力電圧が上昇する速度比例という物理性質を持っているためです。
そこで、再生時にはこの特性を打ち消すイコライザーアンプを使いフラットな周波数特性を得ます。
このイコライザーアンプの特性カーブにはNABカーブやCCIRカーブをはじめとして、様々なものがあります。
このイコライザーカーブは音質に非常に大きな影響があります。
精度の低い回路や、部品の経年劣化や、いい加減な修理で調整がずれていたりすると、
高域が耳についたり、モヤモヤするような妙な音になることがあります。
次の特性グラフは代表的なNABカーブのものです。

- ゲイン(利得、増幅率)
だいたい総ゲインで+70dBくらいにすることが多いようです。
- 入力インピーダンス
ALP−mkIIは入力インピーダンスの調整が容易な構造をしています。
入力インピーダンスはヘッドの負荷インピーダンスになります。
下図の素子11−16とJP11、JP12で調整します。
通常はアンバランス入力でしょうから、JP12はGにセットします。

入力インピーダンスは再生ヘッドにとっての負荷になります。
ヘッドのようなコイルの起電力を信号源とするものは、負荷インピーダンスの変化によって特性が影響を受けることが多く、
音質追求のためにはインピーダンス調整は見逃せないポイントになります。
抵抗値は36k〜470kΩくらいが適正でしょう。もっと小さくても良いかもしれません。無くても良い場合もあると思います。
原理的には、負荷インピーダンスを高くするとワイドレンジになりつつハイ上がりになり、
負荷インピーダンスを低くすると出力は小さくなり、フラットになりつつ、ややナローレンジになる傾向があります。
容量値は100p〜1000pFが適正でしょう。容量値は抵抗器に並列に使います。これも無くても良い場合がありそうです。
この容量負荷の主な目的は、ヘッドの機械的共振に起因する高周波ノイズを低減することです。
容量値を増やすほどにハイ落ちしたおとなしい音になる傾向があります。
入力インピーダンスのセッティングについては研究と実験の余地が多分にあります。皆様からの情報を求めます。
- ディスクリート初段回路について こちら参照
ディスクリート初段回路はALP−mkIIの大きな特徴です。
特に入力素子にローノイズのBJTを使った場合はヘッドプリアンプとして理論的な利点があります。
ディスクリート回路の扱いは思ったよりずっと簡単ですので、尻込みせずに是非チャレンジしてみてください。世界が変わりますよ。
ディスクリート初段回路は後日の増設も簡単にできます。
後日実装とする場合はR1,R2に1kR(もしくは0Rのほうが良いかもしれない)を実装します。
その場合、ディスクリート初段回路のパーツと、それらに電力を供給するレギュレーターの1号、2号は未実装でOKです。
SW1〜3は「 OPAMP 」 に切り替えて使用します。
- オペアンプの交換について
オペアンプの種類によって音質にはかなりの違いがありますので、 オペアンプの交換は音質のチューニングに重要なことです。
ALP−mkIIでは単回路と双回路のオペアンプをどちらとも使うことができるので、市販のほとんどのオペアンプに対応できます。
また、ALP−mkIIは単回路オペアンプと双回路オペアンプを同条件で使うことができるため、
双回路オペアンプにありがちな音質上の不利がありません。
オペアンプの交換にあたっては基板にICソケットを実装のうえ、パーツリストの指示に従って行ってください。
- 接続について
再生ヘッドからの信号をダイレクトにALP−mkIIの入力に伝送する必要があります。
ヘッドからの信号を外部に取り出すためにデッキの改造が必要になる場合があります。
通常はアンバランスで取り出して、シールド線で伝送します。
ヘッドと配線の構造によってはバランス信号として取り出すことも可能でしょう。
ヘッドと内部基板の接続にはケーブルとコネクターが使われているはずなので、そこを引き出すと最小限の改造で済みそうです。
フォワードとリバースのヘッドがある場合はスイッチで二つのヘッドを切り替えるといいでしょう。
デッキ内部の再生アンプの入力を切り離して引き出すと、
フォワードとリバースの再生ヘッドを外部で切り替えずに済みそうですね。
内蔵再生アンプに繋いだままパラレルに引き出すことも可能だと思いますが、
その場合は負荷インピーダンスの干渉が起こります。ちょっと気になります。
- 電源について ALP−mkIIの電源回路
ALP−mkIIにとって電源は非常に重要なものです。
電源システムのクオリティーが不十分だと、せっかくの高音質が発揮できなくなります。
レギュレーターにはアリスのRegシリーズをお奨めします。
三端子レギュレーター(7815、7915)でも動作可能ですが、本来の音質は発揮できません。
繰り返しになりますが、電源には決して手を抜かないでください。
ただ…、それでも低コストで使いたい場合はレギュレーターを取り付けずに使うことも出来ます。
その場合は、レギュレーターの取り付け部のINとOUTをリード線などでジャンパーします。
このときにはリード線がグランドにショートしないように注意しましょう。
レギュレーター無しで使うときは、ALP−mkIIの電源入力へは±15Vの直流を供給してください。
【 Tape Head Preamp 01 : NF型 アンバランス入力
】
- NABカーブとCCIRカーブの両方に対応する汎用性の高いセッティングです。
多くのソフトのテープスピードは19cm/sのようです。たまに38cm/sのものがあります。
また、国内ではNABカーブが主流のようです。欧州製のものにはCCIRカーブのソフトもあるようです。
NABカーブのままCCIR特性のテープを再生すると、低域の量感が足りず、高域の伸びがいまいちな音になります。
このような事情を勘案して、NABカーブの19cm/s、38cm/s と CCIRカーブの19cm/s に対応するセッティングとしました。
CCIRの38cm/sへの対応や、その他の特性カーブも実現できます。別項に追記します。
特性カーブの切り替えはJP22とJP23で行います。
NABカーブ(19cm/s、38cm/s) : JP22をE24に、JP23をONに
CCIRカーブ(19cm/s) : JP22をE25に、JP23をNAに
- イコライザーカーブのチューニングが可能です。
テープのコンディションにあわせて特性カーブの微調整が可能なセッティングも出来ます。
別項に追記します。
- アンバランス入力仕様。ほとんどのオープンリールテープデッキの再生ヘッドに接続できます。
再生ヘッドから配線を引き出してください。
- 入力インピーダンスの調整が幅広くできます。
このセッティングでは入力インピーダンスを47kRから470kRまで幅広く変更できます。
入力容量には100pF、220pF、470pFを選択できます。
迷ったときは220kRと220pFが良いでしょう。
- DCドリフト対策はアクティブ型とパッシブ型の2種類を備えます。
オペアンプをハイゲインでつかうとDCドリフトが気になることがあります。
このセッティングでは前段、後段のそれぞれのオペアンプにアクティブ型かパッシブ型のDCドリフト対策を選択できます。
具体的な方法は別項で説明します。
- 音量調節が可能です。
VRに10kR Aカーブの可変抵抗器を使うことで音量調整が可能になります。
パワーアンプにダイレクトに接続するときに便利でしょう。
音量調節機能を使わずに通常のテープヘッドプリアンプとして使うときには、
VRを全開で使うか、JP31をOFFにセットします。
※クリックするとPDFファイルが開きます。

※Co1−6はシステムのチューニングによっては無いほうが音が良い場合もあるので、
試聴しながら取り付けや取り外しをするのも良いです。
面倒な場合は最初から取り付けてしまいましょう。
※後段オペアンプの安定性を調整するために、E44の位相補償コンデンサーを使うことができます。
JP41をE44に、JP42をONにするとE44のコンデンサーが有効になります。
試聴しながら決めても良いでしょう。
※オペアンプの品種によってはハイゲインで使うと大きなDCドリフトを発生することがあります。
この対策には、オペアンプのDCゲインを下げるアクティブ型と、フィルターでカットするパッシブ型があります。
それぞれに利点がありますし、音質が異なるので気になる場合は両方試してみる必要があります。
ALP−mkIIではアクティブ型のほうが(たまたま)便利に使えるようになっています。
(前段オペアンプ)
アクティブ型:JP24をNAに、E37を0Rにセット。不要な場合はJP24をONに
パッシブ型:JP24をONに、E37を0.047uFにセット。不要な場合はE37をショート
(後段オペアンプ)
アクティブ型:JP43をNAに、E51を0Rにセット。不要な場合はJP43をONに
パッシブ型:JP43をONに、E51を10uFにセット。不要な場合はE51をショート
※特性カーブの変更や調整は次のようにします。
以下ではCCIRカーブモードの変更のみを行い、NABカーブモードの変更は行っていません。
CCIRの特性カーブを19cm/sから38cm/sに変更する。
≫ E25を360Rに変更
特性カーブの調整を可能にする。CCIR専用モードは使えなくなりますが、
特性の可変範囲にはNAB(19cm/s,38cm/s)、CCIR(19cm/s,38cm/s)が含まれます。
≫ E25を240Rに、Rx20を半固定抵抗器1kR Bに変更
上記のRx20を2kR Bに変更すると可変範囲が大きくなり、
NAB(9.5cm/s,19cm/s,38cm/s)、CCIR(9.5cm/s,19cm/s,38cm/s)、
カセットテープのノーマル・ハイ・メタルポジション、等が含まれるようになります。
【 Tape Head Preamp 02: CR型 アンバランス入力
】
- まず見かけることのない貴重なCR型テープヘッドプリアンプです。
アナログレコードの世界では音質の良さから一定の評価のあるCR型ですが、
磁気テープの世界では、まずお目にかかることはありません。
それは、ある問題点をクリアしなければならないからなんですが、
横濱アリスらしい方法(?)でクリアしてみました。その音質や如何に!?
- NABカーブとCCIRカーブの両方に対応する汎用性の高いセッティングです。
多くのソフトのテープスピードは19cm/sのようです。たまに38cm/sのものがあります。
また、国内ではNABカーブが主流のようです。欧州製のものにはCCIRカーブのソフトもあるようです。
NABカーブのままCCIR特性のテープを再生すると、低域の量感が足りず、高域の伸びがいまいちな音になります。
このような事情を勘案して、NABカーブの19cm/s、38cm/s と CCIRカーブの19cm/s に対応するセッティングとしました。
CCIRの38cm/sへの対応や、その他の特性カーブも実現できます。別項に追記します。
特性カーブの切り替えはJP22とJP32で行います。
NABカーブ(19cm/s、38cm/s) : JP22をE25に、JP32をE34に
CCIRカーブ(19cm/s) : JP22をE24に、JP32をE35に
- イコライザーカーブのチューニングが可能です。
テープのコンディションにあわせて特性カーブの微調整が可能なセッティングも出来ます。
別項に追記します。
- アンバランス入力仕様。ほとんどのオープンリールテープデッキの再生ヘッドに接続できます。
再生ヘッドから配線を引き出してください。
- 入力インピーダンスの調整が幅広くできます。
このセッティングでは入力インピーダンスを47kRから470kRまで幅広く変更できます。
入力容量には100pF、220pF、470pFを選択できます。
迷ったときは220kRと220pFが良いでしょう。
- DCドリフト対策はアクティブ型とパッシブ型の2種類を備えます。
オペアンプをハイゲインでつかうとDCドリフトが気になることがあります。
このセッティングでは前段、後段のそれぞれのオペアンプにアクティブ型かパッシブ型のDCドリフト対策を選択できます。
具体的な方法は別項で説明します。
- 音量調節が可能です。
VRに10kR Aカーブの可変抵抗器を使うことで音量調整が可能になります。
パワーアンプにダイレクトに接続するときに便利でしょう。
音量調節機能を使わずに通常のテープヘッドプリアンプとして使うときには、
VRを全開で使うか、JP31をOFFにセットします。
※クリックするとPDFファイルが開きます。

※Co1−6はシステムのチューニングによっては無いほうが音が良い場合もあるので、
試聴しながら取り付けや取り外しをするのも良いです。
面倒な場合は最初から取り付けてしまいましょう。
※後段オペアンプの安定性を調整するために、E44の位相補償コンデンサーを使うことができます。
JP41をE44に、JP42をONにするとE44のコンデンサーが有効になります。
試聴しながら決めても良いでしょう。
※オペアンプの品種によってはハイゲインで使うと大きなDCドリフトを発生することがあります。
この対策には、オペアンプのDCゲインを下げるアクティブ型と、フィルターでカットするパッシブ型があります。
それぞれに利点がありますし、音質が異なるので気になる場合は両方試してみる必要があります。
ALP−mkIIではアクティブ型のほうが(たまたま)便利に使えるようになっています。
(前段オペアンプ)
アクティブ型:JP24をNAに、E37を0Rにセット。不要な場合はJP24をONに
パッシブ型:JP24をONに、E37を0.047uFにセット。不要な場合はE37をショート
(後段オペアンプ)
アクティブ型:JP43をNAに、E51を0Rにセット。不要な場合はJP43をONに
パッシブ型:JP43をONに、E51を10uFにセット。不要な場合はE51をショート
※特性カーブの変更や調整は次のようにします。
以下ではCCIRカーブモードの変更のみを行い、NABカーブモードの変更は行っていません。
CCIRの特性カーブを19cm/sから38cm/sに変更する。
≫ E35を750Rに変更
特性カーブの調整を可能にする。CCIR専用モードは使えなくなりますが、
特性の可変範囲にはNAB(19cm/s,38cm/s)、CCIR(19cm/s,38cm/s)が含まれます。
≫ E25を240Rに、Rx20を半固定抵抗器1kR Bに変更
上記のRx20を2kR Bに変更すると可変範囲が大きくなり、
NAB(9.5cm/s,19cm/s,38cm/s)、CCIR(9.5cm/s,19cm/s,38cm/s)、
カセットテープのノーマル・ハイ・メタルポジション、等が含まれるようになります。