アリスの定電流回路活用コーナー   (真空管ヒーター電源のための…)

定電流電源用基板(C3B)キットの説明

※定電圧電源(正電源)としても使用できます。

  

【キットの概要】

アリス  「定電流/定電圧電源用の基板になります。名前はC3Bです。
      miniReg2(+)を2枚実装することで2系統の可変定電流/定電圧基板として使用することができます。
      真空管のヒーター電源用途に適しています。
      ※新たに製作したopeReg(+)#SLED.Reg(+)の搭載も可能です。」

みみずく 「プリアンプに良く使われる6DJ8、ECC88、6922、E88CC、7DJ8、PCC88、12AX7についての具体的なセッティング例については
      こちらを見てもらうとして、いろいろと工夫を凝らしたみたいだね。

アリス  「はい。まず、みみずく先生に教えてもらったとおりに入力にCRフィルターを搭載しました。
      ほかに箇条書きにするとこんな感じです。

      ・放熱フィンを取り付けられるようにしました。空冷効率向上のための空気孔も設けました。

      ・2ケ所ある電源の接続箇所の一方をスルーアウトとして利用することでC3Bをスタックして簡単に複数の並列使用をすることができます。

      ・部品の取り付け方を変更することで、入力にCR/LCノイズフィルターを、出力にデカップリングコンデンサーを装備した
       可変定電圧電源装置(正電源専用)としても使用できます。レギュレーターを2段重ねにすることもできます。


アリス 「レギュレーターの安全を確保をしながら性能を引き出すには突入電流についての基本的知識が必要です。
     自作を始めたばかりの方に参考になるかもしれません。」

     →レギュレーターの突入電流対策について

アリス 「専用の放熱器を使用して、最大発熱量3W(最大出力ではない)くらいまでが良いと思います。」


【頒布について】

・アリスの可変定電流/定電圧基板 C3B

内容
  基板(56.5o×56.5o)………1枚

※miniReg2(+)、opeReg(+)#S、放熱フィン、ターミナルブロックは別売りです。
※抵抗、コンデンサーは付属しません。

ご注文についてはオーダーについてをご参照下さい。


【キットの使い方】

※こちらでは定電流出力の説明を行ないます。定電圧出力の使い方のみを知りたい方はこちらへどうぞ。

アリス 「まずは本基板の写真と回路図です。写真はクリックすると拡大します。」

 

 

C3Bの出力電流(A)= R1の両端電圧(V) ÷ R1の抵抗値(Ω)

 

みみずく 「比較的シンプルな構成の基板だね。入力のCRフィルターでノイズやリプルを低減させた後に、
      miniReg2(+)でR1の両端に定電圧をかけることで+CCから定電流を出力する回路として機能させている。
      CK1〜CK3はチェック端子のことかな?」

アリス  「そうです。本基板は片面基板なのでCK1、CK2、CK3のそれぞれに
      Uの字型のリード線を通しておくことでテスターでの計測がやりやすくなります。」

みみずく 「セッティングを行なう際には、基本的に出力電流と電源からの入力電圧、あとはminiReg2(+)とR1、R2の発熱量を考慮すればよい。
      Cについては1000μFか、もしくはそれ以上のものを積んでおくのが良いだろうね。まぁワリと適当で大丈夫。
      考慮すべき条件は以下のとおり。」

      ・R1にかかる電圧(miniReg2(+)にとっての出力電圧)は1.5V以上が望ましい。
       (miniReg2(+)はNFBモードでは2.5V以下の電圧を出力できないので注意が必要です。)

      ・小型放熱フィンの装備を考慮してminiReg2(+)の発熱量は3W以下が望ましい。

      ・miniReg2(+)のIN/OUT間の電圧降下は2.5V以上が望ましい。

      ・R1,R2ともに発熱量は定格の半分以下が望ましい。

アリス  「C3Bには酸化金属被膜抵抗器の2W小型品の使用を想定しています。3W品もちょっとリード線を曲げれば実装できるはずです。
     抵抗器のサイズは600milで設計されています。」

みみずく 「最大定格はminiReg2(+)のパワートランジスターで決まる。2sc3422の場合だと最大で3Aまで、
      1Aあたりまでだと充分な特性があるだろうね。
      R1とR2、そしてminiReg2(+)の発熱量はminiReg2(+)の入力電圧をVin、出力電圧をVoutとして次の式で決まる。」

      ・miniReg2(+)の発熱量(W)=出力電流(A)×{Vin−Vout}(V)

      ・R1の発熱量(W)={出力電流(A)}^2×R1(Ω)

      ・R2の発熱量(W)={出力電流(A)}^2×R2(Ω)   ※「^2」は2乗という意味。この場合は(出力電流)×(出力電流)。

アリス  「それでは具体的な使い方の目安について見ていきましょう。」

 

【定電流電源】

アリス  「この基板は主に真空管のヒーター電源に使用する目的で作ったんですけど、もちろん一般の定電流回路としても使えます。
      計算の順序としては出力電流を決めることから始まりますよね?」

みみずく 「そうだね、じゃあ具体的に6922を例にとって計算してみようか。」

アリス  「6922のヒーター電圧は6.3V、ヒーター電流は300mAです。」

みみずく 「R1での発熱を1Wまでとすると、300mA流す場合には

      1(W)÷0.3(A)^2=11.1111…(Ω)

      でR1は11.11Ω以下でなければならない。
      ここではR1=7.5Ωとしてみようか。」

アリス  「そしたらR1での電圧降下量は

      0.3(A)×7.5(Ω)=2.25(V)

      となりますね。」

みみずく 「6922のヒーター定格は6.3Vだから、この場合はminiReg2(+)の出力電圧は6.3V+2.25V=8.55Vとしなければならない。
      さらに、miniReg2(+)に性能向上のためFETを載せてあるとして、miniReg2(+)に必要なドロップ電圧の最小値は5V、
      また最大値については、miniReg2(+)の発熱量を3Wまでと制限すると

      3(W)÷0.3(A)=10(V)

      であるから、許されるドロップ電圧の最大値は10Vとなる。
      結局、miniReg2(+)への供給電圧は13.55V(8.55+5)〜18.55V(8.55+10)の範囲となる。」

アリス  「ということは15Vのスイッチング電源がつかえますねー。」

みみずく 「まぁ、スイッチング電源には限らないが、そういう考え方でいいよ。
      15Vの電源を使うとすると、R2で許される電圧降下は15V−13.55V=1.45Vまで。」

アリス  「ということは

      1.45(V)÷0.3(A)=4.84(Ω)

      までがR2に許される最大値ということですね。」

みみずく 「ということでR2=4.7Ωとしよう。念のため発熱量を計算すると

      0.3(A)^2×4.7(Ω)=0.423(W)

      なので、定格1Wの抵抗を使えば発熱量に関しても問題がない。」

アリス  「ということで、電源電圧=15V、R1=7.5Ω、R2=4.7Ω、R1での電圧降下=2.25V
      という一例ができたわけですね。」

みみずく 「そして、実際の使用では真空管の定格ヒーター電圧になるようにminiReg2(+)の出力電圧を調整すると良い。
      具体的にはCK2とCK3の間の電圧がヒーター電圧に等しいから、
      6922については、そこが6.3Vになれば良いということになる。」

アリス  「あ、そうだ、みみずく先生。miniReg2(+)はNFBモードの時には最低出力電圧が約2.5Vです。
      なので、non-NFBモードとNFBモードで音の違いを体験したい場合には定数が変ってきますよね?」

みみずく 「そうだね、その場合にはR1にかかる電圧を常に2.5V以上にする必要があるから、こんな定数がいいんじゃないかな?
      R1とR2の定格は2Wだ。」

     (6.3V 365mA) 電源電圧15V  R1:7.5Ω  R2:2.4Ω

     (6.3V 300mA) 電源電圧15V  R1:9.1Ω  R2:3Ω

     (7.0V 300mA) 電源電圧15V  R1:9.1Ω  R2:0.82Ω(もう少し電源電圧を上げられるならR2を増やした方が良い)

     (12.6V 150mA) 電源電圧24V  R1:18.0Ω  R2:24Ω

アリス  「セッティングの自由度が高いと定数の決定に一苦労ですね。」

みみずく 「セッティングによって音に違いが出るので、それはそれで面白いことなんだよ。」

 

【定電圧電源】

アリス  「C3Bは定電圧電源としても使えるようになっています。」

みみずく 「ちょっとした変更が必要なんだよね。」

アリス  「定電圧電源として使用する場合にはCK2とCK3をリード線などで接続し、R1のかわりにデカップリング・コンデンサーを実装します。
      電解コンデンサーを使用する場合はCK1側がプラスでCK2側がマイナスです。出力にはV端子を使用します。
      また、この場合はG(グランド端子)=+CC(定電流出力端子)となります。」

みみずく 「入力にCRフィルター(LCも可、その場合はRのかわりにLを実装する)、出力にはデカップリングコンデンサー、
      さらに放熱フィンを備えた2系統の定電圧電源として使えるわけだ。」

ありす  「むしろ、こっちの使い方のほうが便利かしら?」

 ●多段レギュレーター

アリス  「レギュレーターを2段重ねにして使いたいとのご質問がありました。
     このように配線するとC3B単体で2段にすることが出来ます。」

みみずく 「レギュレーターの2段重ねはラインレギュレーションの向上について大きな効果がある。面白いんじゃないかな。」

アリス  「応用技で 定電圧レギュレーター ⇒ 定電流レギュレーター という技も使えます。定電流性能が上がるでしょう。
      他には、定電流レギュレーター ⇒ 定電圧レギュレーター として電流リミッター付きの定電圧電源として使うのもいいですね。」

 

【実装例など】

入手しやすい、おなじみの端子台(ターミナルブロック)が使用できます。

 

 

miniReg2(+)を載せたところです。撮影用なので片方が(−)のモデルになってますが気にしないで下さい。

 

一通りの実装をした状態です。

 


アリス   「というわけで、パーツを基板に半田付けして、ユーザーの責任と判断のもと、充分に注意してご使用ください。
      本製品の製作・使用等に伴う事故や損害等につきましては、こちらでは一切の責任を負いませんので、あらかじめご承知置きくださいね。」

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