Tripath(トライパス) TA2020-020初段直結化 DCアンプ・スペシャル の巻き

※入力のカップリングコンデンサーを排除し、入力から出力まで直結化されたDCアンプになってます。

その2

 

みみずく 「と、いうわけで、Tripath(トライパス)TA2020-020の高音質化に取り組むわけだけども、
      データシートは読んできたかい、アリス?」

アリス  「はい、読んできました。
      当たり前ですが全部英語なので理解度はいまいちですが…」

みみずく 「まぁ、そのうち慣れるよ。
      英語とはいえ、専門用語だからかえって簡単なんだよ。」

アリス  「はぁ、あたしには程遠いわ…」

みみずく 「ところで、トライパスの特徴は?」

アリス  「D級アンプであることです。」

みみずく 「そうだね。では、D級アンプの特徴は?」

アリス  「えっと、アンプの出力段がオンかオフかの間欠的なスイッチング動作をすることです。
      このことから、スイッチングアンプとも呼ばれます。」

みみずく 「そうだね、デジタルアンプという名称は正式なものではなく一般名称だね。
      D級アンプであることで出力にどんな特徴があるかな?」

アリス  「出力がパルス状で、最大電圧か最小電圧の常にどちらかになることです。
      これをローパスフィルター回路で音楽信号に復調してスピーカーを駆動しています。」

みみずく 「そのくらい理解できていれば大丈夫だろう。」

アリス  「まったくわかった気にならないけど…」

みみずく 「やっているうちにわかってくるよ。
      さて、データシートには、このチップの使い方が記載されている。」

アリス  「これは、絵だからわたしにもわかりやすいわ♪」

みみずく 「アリスの組み立てたキットと比べてどうかな?」

アリス  「ほとんど同じ回路です。」

みみずく 「そうだね、ほとんど同じだ。
      これはチップの製造メーカーが動作を保証している使い方なので、基本的にはこれに従ったほうがよい。」

アリス  「今回はデータシートに乗っているメーカー奨励の使い方を破ってみるわけですね。」

みみずく 「破るというと大げさだが、データシートに従わないということは、
      チップが正常動作しなくなったり破損したりするリスクは高くなる。」

アリス  「でも、そういうほうがワクワクしますね♪」

みみずく 「ま、そういうワルいコのための使い方さ。
      ところで、アリスが気になるところは?」

アリス  「わたしが気になってるのは入力のカップリングコンデンサーです。
      調べたところによると、トライパスは入力に直流電圧がかかっているので、
      その直流が前段機器に逆流しないよう遮断するためにあるんだとか。」

みみずく 「そうだね、交流を通し直流をカットするという、まさにカップリングコンデンサーの使い方だね。」

アリス  「データシートによると静電容量2.2μFのフィルムコンデンサーが奨励されているんですが、
      100μFの電解コンデンサーに変えたら低音が良く出るようになりました。」

みみずく 「カップリングコンデンサーはハイパスフィルター(ローカットフィルター)を構成するものだ。
      静電容量を増やすと、より低域を通しやすくなる。
      その効果だろうね。」

アリス  「ただ、電源オン時に物凄いポップノイズが出ます。
      『ぼんっ』って、スピーカーが壊れるんじゃないかってくらい。」

みみずく 「大きいコンデンサーのほうが電荷が平衡状態になるまでに時間がかかる。
      その間、入力に直流が流れ込んでいるのと同じような状態になる。
      それをトライパスが増幅して一時的にスピーカーに直流が出力されるのさ。
      そのせいで大きなポップ音がする。」

アリス  「ただ、電解コンデンサーよりフィルムコンデンサーを使った方が中高音のクオリティが高いように感じました。
      劇的な差ではないですけど。」

みみずく 「まあ、伝達特性はフィルムコンデンサーの方が優れているしね、そう感じても不思議は無いかもしれない。」

アリス  「入力のカップリングコンデンサーをいろいろと交換してみるのは、トライパスのチューニングのセオリーみたい。
      なので、いろいろ試してみたんですが、劇的な違いは無いので、いっそこれを直結してみたらどうなるのかなって?」

みみずく 「なるほどね。入力の直結化ってことだね。」

アリス  「ネットでも検索してみたんですけど、そういうのはどこにもなくって…。」

みみずく 「そりゃあ無いだろうねぇ。普通のやり方じゃないからね。」

アリス  「やる方法はあるんですか?」

みみずく 「もちろん可能だよ。」

アリス  「さっすがぁ、みみずく先生♪」

みみずく 「トライパスの入力には2.5V前後のバイアス電圧がかかっている。
      要は入力信号にトライパスと同じバイアスを与える直結回路を考案すれば、
      入力のカップリングコンデンサーは排除してもかまわないということになる。
      この場合、トライパスは直流も含めた増幅が可能なDCアンプになる。」

アリス  「さらにワクワクしてきました。ものすごく低音が出そう。」

みみずく 「ただし、音がよくなる保証はない。
      コンデンサーのような、素子の物理的性質を直接利用した回路を、他の回路で音質的に超えることは基本的に難しい。
      特にフィーリングが悪くなることが多い。」

アリス  「やめた方がいいの?」

みみずく 「やる前から決めつけちゃ面白くないだろ?
      いろいろ試してみようじゃないか。
      もしかしたら、すごくいい音になるかもしれないよー?」

アリス  「それって自作マニアに対する呪文ですよね。
      そして、どんどん深みにはまっていくのでしょう。」

みみずく 「むしろ悦楽の世界といおうか。きっと苦行が快感になるんだ。」

アリス  「では、どんな苦行からはじめましょうか、みみずく菩薩さま?」

みみずく 「せっかくだから、もう少し仕様を煮詰めようじゃないか。
      アリスは他にどんなことがしたいんだい?」

アリス  「前に『miniReg』や『V.Reg』の電源キットを作ったときに、
      それをギターエフェクターの電源に使ったらすごく音がよくなったので、それをやってみたいなぁって。」

みみずく 「ふむ、D級アンプは電源に対する負荷が厳しいアンプだから効果的かもしれないね。」

アリス  「他には、電源オン・オフ時のスピーカーからのポップ音を何とかしたいです。
      リレーでポップ音を遮断するようなキットをみたことがあるんですが、そんなのを欲しいです。」

みみずく 「充分に可能だろう。」

アリス  「あとは…」


〜ここでしばらくブレインストーミング状態に〜


みみずく 「さあ、だいぶまとまってきたようだ。
      アリス、整理してくれるかい?」

アリス  「はい。今回の実験製作で採用する機能は以下のようになりました。」

   @入力直結回路
     直結回路を採用することで入力カップリングコンデンサーを排除。
     トライパスをDCアンプ化する。
     高音質化なるか?

   A分割給電
     トライパスのパワー、デジタル、アナログと直結回路の左右チャンネルのそれぞれに電源キット『V.Reg』相当の電源を独立配置する。
     はたして効果は?

   Bアース(グランド)分離
     トライパスはD級アンプであるためアース(グランド)にパルスノイズが流れます。
     大きなパルスノイズが流れるパワーグランドとアナロググランドを高周波的に分離。
     聴感上の効果はあるか?

   Cバスブースト回路
     低域が弱いと言われがちなトライパスのために低域増強回路を搭載できるようにする。
     DCアンプ化することで低音が出るようになるので不要な可能性もあるが。
     簡単にやれるのでオマケにつけることに。

   D各種安全装置
     電源オン・オフ時のポップ音を防ぐためにリレースイッチを使用。
     その他、アンプの異常動作に備えるための緊急遮断回路を搭載する。
     こういった保安回路はアンプ本体とは独立した電源系統とし安全性を高める。
     地味だが大事。

みみずく 「こういったことを満たしながら、できるだけ高音質を目指すことが今回のテーマとして決まったわけだ。」

アリス  「なんだか欲張りすぎたような気が…」

みみずく 「これでもずいぶん減らしたんだけどね。」

アリス  「今までやってきたことと比べると圧倒的に高度です。あたしにやれるのかな…」

みみずく 「さあ、明日からアリスの苦行に手を貸してあげよう。」

アリス  「あ、あたしだって、きっと人柱くらいならやれるわ(?)」

みみずく 「だいじょうぶ。ゆっくりやれば必ずできるよ。」

 

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