アリスのケミコン・ボードの巻き その4(完成編)

 

アリス  「こんにちは、みみずく先生。アリスでーす。基板、届いたんですよねー♪」

みみずく 「やあ、アリス。ちょっと待ってておくれ…。……ほら、これだよ。」

 

アリス  「わーい♪設計したものができあがってくると嬉しい♪」

みみずく 「しげしげと眺めてしまうよな。」

アリス  「うんうん♪『アリスのケミコンボード』って、ちゃんとはいってる。カワイイ、満足です♪」

 

みみずく 「基板にバグはなさそうだね。」

アリス  「それじゃあ、さっそく組み立ててみようっと。」

みみずく 「アリスは気が早いね。よかったら私の研究室を使いといい。」

アリス  「ありがとうございまーす。あ、そうそう、コンデンサー、分けてもらえそうなものってありませんか?」

みみずく 「そうだねぇ…、実験の内容が内容だから、できるだけ高性能な電解コンデンサーを使いたいよねえ…。
      ちょっと待ってね…。……ゴソゴソ……」

アリス  「わくわく。」

みみずく 「お、いいのがあったぞ。とっておきの超高性能電解コンデンサーだ。前に仕入れていたんだった。」

アリス  「見た目は普通ですね。」

みみずく 「そうだね、工業用の普通のものだ。そういえば、アリスは普段『オーディオ用』と銘打った電解コンデンサーを使っているんだったね。
      アレは見た目もゴージャスだ。それに比べると、これはどうということもないモノのように見えるね。」

アリス  「『オーディオ用』は、見た目も大きいのが多いです。買うときにワクワクするんですよね♪このコンデンサーは何が違うの?」

みみずく 「電解コンデンサーとしては総合力で群を抜いた性能を持っている。海外でニセモノが出回っているほどだ。
      超低ESR品だけど、フィルムコンデンサーほどには低くはない。今回の用途にはうってつけだ。
      瞬間的な大電流にも強いし、動作温度も105℃まで保証してるから熱くなったって少々のことではへこたれない。」

アリス  「そんなこと聞いちゃうと、普通の見た目がちょっぴりかっこよく見えてきちゃいました。」

みみずく 「そうだろう?ちなみに経年劣化に対する性能も極めて優れている。
      それとね、大きな声ではいえないが、他社(特に海外)の製品にはカタログ性能を偽装していたりして、
      高性能なフリをしているモノもあったりするんだが、このケミコンは測定してみると正にカタログどおりの能力を持っている。
      必要以上にスペックで着飾ってはいないので、そんなに目立つ存在ではないが、使ってみるとその高性能ぶりがよくわかる。
      ここだけの話、オーディオ用としても高性能で、音もよい。」

アリス  「みみずく先生の一押しのケミコンというわけですね。」

みみずく 「そう、ここ一番でかなり頼りになるケミコンだ。」

アリス  「と、いうわけで、さっそく作業をさせてください。」

みみずく 「やけどに気をつけるんだよ。」

〜〜しばらくして〜〜

アリス  「でっきたぁ〜♪みみずく先生、できましたー♪」

 

みみずく 「お疲れ様、だいぶ半田付けが早くなったね、アリス。」

アリス  「えへへ、ありがとうございます。この半田ごて使いやすいですね?」

みみずく 「ほとんど毎日使うものだからね。それなりにいいものを買ってあるのさ。」

アリス  「やっぱり、いい道具は違いますねー。それだけで上手くなったように感じます。」

みみずく 「半田不良はなさそうだ。使えそうだね。」

アリス  「実験開始ですね♪」

みみずく 「何からはじめるつもりだい?」

アリス  「みみずく先生、クルマ出してください。」

みみずく 「は?なんで?秋葉原にでも行きたいのかい?」

アリス  「秋葉原はまだコワイです。一緒に行ってくれるんならいいけど。
      そうではなくて、このケミコンボードちゃんをみみずく先生のマシンに取り付けるんです。」

みみずく 「そっちか!アリスは燃費改善には興味ないんじゃなかったっけ?」

アリス  「燃費改善には興味ありません。
      ただ、あちこちのHPにいろんなことが書いてあるので、こんなもので本当に効果があるのか試してみたいなぁ、って。」

みみずく 「そんなことより、ギター・エフェクターやオーディオ・アンプの電源平滑回路に使ったほうが楽しいと思うんだけどなぁ。
      きっと圧倒的な性能だと思うよ。」

アリス  「もちろん、そっちが本命ですよー♪さ、はやく、クルマクルマ♪」

みみずく 「大丈夫かなあ。壊れないかなあ。」

アリス  「みみずく先生、エンジニアでしょ。壊れたら直せますよ。」

みみずく 「まあ、モノは試しだ。やってみよう。まずは取り付ける前の状態を計測しないとね。少し走りに行こうか。」

アリス  「わーい、ドライブだ♪」

みみずく 「やれやれ、仕事が進まないよ。」

〜〜帰ってきた一行〜〜

みみずく 「さて、満タン法でと…、まあ、大体5.8`b/gだね。今日は特に悪いな。熱くてエアコン全開だし、高速道路を使わなかったからな。
      しかし、今まででワーストに近い…。ちなみに普段は6.5`b/gくらいね。」

アリス  「では、ケミコンボードを取り付けましょう。…って、エンジンルーム熱すぎです。触れませんよー。」

みみずく 「あぁ、そうだ。このクルマ。エンジンルームが熱くなるんで有名だった。どれ、私がやろうか。」

アリス  「この車はどんなエンジンなの?」

みみずく 「水平対向6気筒3000cc自然吸気エンジン、DOHCで燃料はハイオク・ガソリン。改造は一切していない。
      燃費ははっきり言ってワルいな。…よし、取り付けたぞ。少し走ってみよう。」

〜〜しばらくして〜〜

アリス  「どう?みみずく先生?違いはあるの?」

みみずく 「そうだね、低速のトルクが太くなったように感じる。滑らかでコントロールしやすい。」

アリス  「横に乗っていても、あんまりわからないわ。」

みみずく 「そういう劇的な変化は起こらないだろうね。」

アリス  「それよりもカーステレオの音の方が気になります。みみずく先生のクルマ、前からこんなにいい音だったかしら?」

みみずく 「あ、やっぱりわかるかい?私もそう思っていたんだ。カーステレオ自体はいままでと同じディーラー標準グレードの安物だ。
      しかし、それにしてもメリハリのある中高音と、パンチと締まりのあるいい低音だ。とてもFMとは思えない音質だ。」

アリス  「ほーんと♪FMラジオがとっても楽しく聞ける。あ、これなんかいいギターの音だわ♪」

みみずく 「カーステレオの音については劇的な違いがあるな。」

アリス  「私は燃費よりこっちの方が好き。」

みみずく 「さあ、そろそろガソリンを入れに行こう。」

アリス  「楽しみですね。」

みみずく 「再び満タン法でと…、大体7.1`b/gだね。」

アリス  「すごーい、よくなってる。」

みみずく 「ちょっと出来過ぎな気もするが、渋滞も無かったしね。それを差し引いても燃費がよくなっている可能性があるね。
      ただ、何度か測ってみないとわからないな。ガソリンの入れ方もまちまちだろうし。」

アリス  「違いはありそうだわ♪」

みみずく 「その可能性は充分ある。」

〜〜後日談〜〜

アリス  「あのときのケミコンボード。ギター・エフェクターの電源に使ってみたら、とってもよかったです。
      音がすっきりと濁りがなくなって、なおかつパンチが出てきました。こんなに違うものなんですね。
      カーステレオのときと音の変化がよく似ているような気がします。」

みみずく 「よかったじゃないか、アリス。ギター系は改造の効果が出やすくって楽しいだろ?」

アリス  「はい、とっても♪これはちょっと手放せないですね。練習時間が増えました。」

みみずく 「これは余談だが、ギター系とピアノ系は同種のチューンが通用する場合が多い。試してみるといいかもしれないよ。」

アリス  「ピアノもですか?それは楽しみです。みみずく先生の方はどうだったんですか?」

みみずく 「結論から言うと、燃費に対してのケミコンボードの効果は断定できない。」

アリス  「あんなによくなったのに?」

みみずく 「いろいろやってみたんだ。まず、バッテリーが古かった。
      ケミコンボードを外してバッテリーを高性能の新品に換えると、これだけで燃費が8`b/gになった。
      この点において、ケミコンボードは劣化したバッテリーを補助する能力はあると考えられる。
      だから、ケミコンボードが劇的に効いた場合にはバッテリの状態をチェックしたほうがいいかもしれない。」

アリス  「ふーん、バッテリーって大事なんだ。」

みみずく 「思っていた以上にとっても大事。高性能バッテリーを積むことは怪しげなチューンよりよっぽど確かな効果があるようだ。
      ただ、いくつか面白いことがわかった。」

アリス  「え、どんなこと?」

みみずく 「ケミコンボードを再度取り付けると、やっぱり低速域が滑らかでコントロールしやすくなる。
      エンジン回転数が低くて、オルタネーターの発電能力が低いときはケミコンボードがバッテリーを補助しているのかもしれない。
      あと、エンジンブレーキが効きにくい。クルマが転がりやすくなったような感じだ。黙っているとなかなか止まらない。
      燃費については8〜9`b/gをうろうろしている。」

アリス  「燃費、よくなってるんじゃないかしら…?」

みみずく 「まあ、良くなってるような気もするんだが…。これについても、さらに面白いことがわかった。
      バッテリーを交換しケミコンボードを搭載した時点で燃費は8`b/gを下回ることがなくなった。
      ところが、しばらくして当初は9`b/gに迫る勢いだったものがギリギリ8`b/gをクリアできる水準にまで落ちてしまった。」

アリス  「それは残念です。」

みみずく 「ま、8`b/gでも都心部での使用を考えれば充分にいい数値なんだけどね。で、ちょっと原因を考えてみた。」

アリス  「聞きたいです。」

みみずく 「私は新品のバッテリーを搭載前に14.4Vでフル充電した。
      これが効果があったのではないかと思って、もう一度バッテリーをフル充電をしてみた。」

アリス  「どうなったんですか?」

みみずく 「案の定、燃費が9`b/gに近くなった。」

アリス  「どうしてなんでしょう?」

みみずく 「そこで、理由を2つ考えてみた。
      1つめの理由。バッテリーを充電したことで、スパークプラグに供給する電圧が上がり、エンジンの燃焼効率がよくなり、
      燃費がよくなった、…かも知れない。少なくともセルスターターは物凄くよく回る。
      2つめの理由。バッテリーを充電したことで、オルタネーターからバッテリーへ供給される充電電流が減少した。
      電磁誘導の原理から言って、発電電流を取り出さないほうがオルタネーターは軽くまわるので、エンジンの負荷が減り、
      燃費がよくなった、…かも知れない。」

アリス  「バッテリーに充電するのが効果的ってこと?」

みみずく 「そうだね、毎日家に帰ったら、バッテリーを充電器につなぎ、せっせと充電すると、燃費は確実によくなるだろうね。
      その電気代はわずかなものだ。月に100円も行かないんじゃないか?」

アリス  「100円かからないんじゃお得ですよね?」

みみずく 「そうだね、明らかにお得だ。ただ、ちょっと注意点がある。」

アリス  「なんですか?」

みみずく 「充電電圧だよ。車載用に使われているバッテリーはほとんどが鉛バッテリーだ。
      鉛バッテリーを充電器に繋ぎっぱなしで使う場合には、主にトリクル充電という方法を使う。
      このときの充電電圧が13.8V。あ、12V用のバッテリーの場合ね。
      一方、フル充電後、充電器から取り外して使うような場合にはサイクル充電という方法を使う。
      このときの充電電圧が14.4V。そして、それぞれに最大電流の制限がある。
      何でかって言うと、あんまり大きな充電電流を流しちゃうと、内部の極版が発熱して劣化してしまうからだ。」

アリス  「いろいろルールがあるんですね。とても覚えられないわ。」

みみずく 「そうかい?簡単なんだけどなあ?
      数ヶ月以上クルマを放置するような場合には13.8V。毎日充電して使う場合には14.4V。
      充電電流の制限はちょっと少ないけど1Aまで。これでどうだい?」

アリス  「これなら、わかります。実際はどうやったらいいですか?」

みみずく 「充電器をシガーソケットに繋いで使うといい。たいていは中心がプラスでスリーブがマイナスだ。
      念のためテスターで確かめたほうがよいね。キーを捻らないとシガープラグとバッテリーが導通しない車種も多い。
      その場合、スペアキーでアクセサリーモードにしておく方法がある。
      但し、アクセサリーモードでは消費電力の大きい車種があるから、
      できればこんな接続プラグを作ってバッテリーに直結接続して充電をするのがオススメだ。」

アリス  「これくらいなら、私でもできそうです。」

みみずく 「ちなみに、鉛バッテリーはフル充電に近い状態で使ったほうが寿命が延びる。
      『5割放電⇔フル充電』のサイクルと『3割放電⇔フル充電』のサイクルとでは使用可能時間で※5倍ほども違う。
      できれば放電量は2割以内に抑えてフル充電するのが理想的だ。それと急速充電は行わないほうがよい。」
     ※実験室でのはなし、実際は諸条件が重なり寿命は4〜5年程度が限界。

アリス  「急速充電も禁止だし、電圧と電流を自由に設定できる充電器なんて、あんまり売ってませんよ?
      安定化電源装置を持っていない人には敷居が高くありませんか?みみずく先生?」

みみずく 「充電回路なんて簡単に作れるんだけどなあ?というわけで、アリス。君にその栄誉を授けよう。」

アリス  「え〜、あたしが作るの?」

みみずく 「初学者にはいいお題だと思うよ。この勉強をすると、ギターの音がもっとよくなるかも知れないゾ。」

アリス  「はーい、頑張ってみまーす。」 →コチラでやりました

〜〜こんかいのけつろん〜〜

みみずく 「かなり横道にそれてしまったが、結論を言うと、ケミコンボードを搭載したことで燃費が悪くなることは無く、よい数値が出ることも多かった。
      但し、燃費の改善について断言できるほどのデータを得ることができなかった。
      エンジン低回転時の操縦性の改善は確かなものであると思われ、滑らかなフィーリングを感じさせる。
      よって、つけたままでも、いいかな?と、思っている。カーステレオの音はとても良くなった。」

アリス  「私は楽しかったからOK♪」

※注記:充電という形で外部からエネルギーの供給があるわけだから厳密には燃費の改善とはいえない。

 

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