(AL2020iE)

アリス 「いま AL2020iE というパワーアンプのキットを開発しています。
     Tripath社のTA2020-020というD級パワーアンプICを使ったものです。」

宇宙雑貨工房 横濱アリス では足掛けでおよそ8年に渡ってTripath社のD級アンプICの実用研究を行ってきました。
その結果、メーカーのデータシートに従ったものを含め、これまでの多くの使用方法ではその高い潜在能力を充分に発揮出来ておらず、
更に工夫を重ねることで驚くほどの音質向上が可能であるという結論に至りました。

その研究成果をすべて盛り込み、Tripathの音を搾り尽そう、という意気込みでAL2020FMCというキットを開発している訳なんですが、
案の定といいますか、やっぱりといいますか、音は唸るほど素晴らしいものの、
複雑で大げさになり過ぎていて、製作コストと製作の手間暇を考えるとキットとしてそれはどうなの?という状況になってしまいました。
そこで、AL2020FMCはごく一部のタフな自作家の為のこだわりの逸品ということにしておいて、
それとは別に扱いやすさと音質のバランスが良いパワーアンプキットをつくりたいなと考えるようになりました。

それがAL2020iEです。

ここ最近はこのアンプの実験開発に明け暮れています。


★どうしてつくろうと思ったの?

  小型で音の良い優秀なサブシステムが複数欲しかったから。
  もう少し詳しく言うと、複数機制作してもいいなと思えるくらいに製作の労力と費用の負担感が少ないもので
  更にデスクトップやベッドサイドなどで使うにはコンパクトでなければならない。
  それでも納得行くだけの音質を持つものを作りたかった。
  市販品では納得出来るものがなかった、と言うこともあります。

★開発するうえでのねらい
  ・今回はコストパフォーマンスを重視する。
  ・製作しやすいこと。部品点数も出来るだけ抑える。また、複雑な調整が不要な構造とする。
  ・小型で手軽に使えること。


★チャレンジしたこと

  ・データシートの範囲を超える用法によって、高い潜在能力を持つTA2020-020の
   ノーマル範囲を超える規格外の領域の音を提供すること。
  ・明らかに市販製品を越えたクオリティーであること(わざわざ自作するだけの価値があること)。
  ・私自身が愛用できるだけの音質クオリティーを備えていること。

 

アリス 「実はもうAL2020iEの試作機は完成していまして、後は基板のアートワークを残すのみです。
     こっからが長いんですけど…
     ちなみに、とってもいい音っすよ。期待してくれてOKです。」


TA2020-020をはじめとした一般的なTripathのパワーアンプキットを作ったことがある人ならわかると思いますが、
インダクターやコンデンサーを交換してもその音の差異は案外小さなものです。
しかし、AL2020iEではAL2020FMCと同様にパーツや定数の変更が如実に音の違いとして現れます。
そのくらいの感度とクオリティーを備えています。


(AL2020iE の主な仕様)
  ・リニア電源回路をローカルで五系統搭載
  ・大型のフィルムコンデンサーなどの高級パーツを搭載可能
  ・出力はリレーやMOSFETスイッチを使わずに直結
  ・DCサーボやオフセットトリムは搭載しない
  ・オンボードボリューム、バランストリム装備
  ・厳密に検討された配線パターンとグランドデザイン


アリス 「仕様について、ちょっと補足します。

     良い音のためには電源回路は決してオロソカにできません。
     でも、懲りだすと複雑になって手におえなくなるのも電源回路です。
     AL2020iEでは部品点数の削減と表現力豊かな音質の両立が重要なテーマでした。
     基板自体は単電源1系統で駆動できるようになっています。

     それと、出力は直結です。コストダウンと音質の向上のため出力のリレーやMOSFETスイッチは排除しました。
     そのため、電源ON時にややポップノイズが出ます。
     その代わりスピーカー破損の危険性の高い電源OFF時のポップノイズはほぼ無音に抑えました。

     出力のDCオフセットを調整するためのDCサーボやオフセットトリム回路は、
     一般的なやり方ではかえって音が悪くなるので、コストと音の兼ね合いを検討した結果、使わないことにしました。

     配線パターンとグランドのデザインにはこだわります。
     コストゼロで確実に音が良くなるので、ここは推敲に推敲を重ねます。
     ……そして、つまり、完成に時間がかかります……

つづく


 

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